劔岳 点の記
公開前から気になっていた映画である。
日本映画界の「名カメラマン」木村大作監督の渾身作。
こだわりぬいた映像にただ感動。
実際に登った者でしか見られない美しくも厳しい山岳・自然をスクリーン上で見せてもらえてありがたい。
浅野忠信、香川照之をはじめとする俳優陣とスタッフの努力と忍耐も賞讃に価するものである。
100年前に、名誉も利も求めず、命懸けで「測量」という仕事を全うした男たちへのオマージュ。
俳優陣は芝居をしなくとも、自然に彼らと同化したにちがいない。
ただ登るだけでも大変なのに、そこからが本来の仕事となるところが同じだから。
香川照之が舞台あいさつで、裏話を披露していたのを動画で見た。
―劔岳登頂に成功したしたが、天気が悪くて撮影できず、頂上に数時間いて、そのまま降りざるを得なかった。登山としては成功なんだけれど、映画としてはまったく成立しなかった・・・。
―再度アタックして、7月13日、くしくも100年前登頂に成功したのと同じ日、監督の誕生日でもあったこの日に、また頂上に登ったが、先に登頂していた監督達が、周りの景色をばしばし撮影していた。
いつ、本編撮影になるのか合図を待っていたが、なかなか合図がない。
どうしたことかと思ったら、景色の撮影にフィルムを使いきってしまったとのこと。
普段は予備のフィルムも持ってくるのにこの時は、どうしたことかベースキャンプに置いてきてしまったという。ベースキャンプまでは、往復8時間かかる・・・。
次第に事の重大さに気付き、途方に暮れたが、ある登山経験豊富なスタッフが、取りに行ってくると言って下山した。いつもは50kg近くの荷を背負って歩いているのに、荷物なしの身軽な状態で行ったので、道をよく知っている彼は、1時間40分でもどってきた!
彼のおかげで撮影ができて、完成したといっても過言ではない。もし彼がいなかったら、きっと今頃まだ、剣岳の頂上で撮影中だろう(苦笑)・・・。
こんな苦労をして映画を完成させた彼らの顔は、本当にいい顔をしていると思った。
ストーリーの上で、あくまでも初登頂にこだわる軍部と、日本登山協会との競争を無暗にあおる新聞社には、腹が立ったが、最後に、測量部と、登山協会が、お互いの登頂を讃えあうシーンで、そんなことはどうでもよいことだ、軍部や新聞社などむしろ滑稽にすぎないと思え、観終わったときは清々しさが残った。
観て良かったと思える映画だった。
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