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2014年1月30日 (木)

初めての経験

5歳の男の子。

8月のお盆前に、少し怖がりだったけど、初診を含めて4回目で乳臼歯6本の治療が終わり、あと2本というところで、お母さんが九州の実家に帰るので、中断となっていた。

戻ったら予約ということになっていたはずなのに音沙汰がなかった。

その子が年が明けてから、歯が痛いということで来院。

なんでも、お母さんが行っている歯医者で、子供も診てくれるというので、残っていたむし歯を治療してもらったが、少し削ったところで、暴れたので、すぐ詰めて終わったとのこと。そこを痛がっているという。
レントゲンを撮ってみると、明らかに夏よりも齲蝕が進んでいて、抜髄が必要だと思われた。

痛いので本人が歯医者に行くと言ったそうだが、いざ診療台に寝て口腔内を一通り診察した後、バキュームを手にしたら、急に起き上がって怖がる。スタッフやお母さんが寝せようとすればするほどパニックになり泣き叫んだ。

挙句の果ては台から降りて隅っこに隠れる始末。

誰の説得にも耳を貸さず、狭いところに入り込んで出てこない。

仕方ないので、治療は次回にすることにして、母親に説明。
神経に至るまでの大きなむし歯があるので、嫌がっても治療が必要なこと。そのままでは、すぐに起きたり暴れたりあぶないので、レストレイナーを使って強制治療をせざるを得ないこと。

以前治療した時にはこのような拒否反応はなかったのに、どうしたことかと思ったが、母親の行きつけの歯科医院で麻酔をしないで削ったらしいので、痛みの記憶で恐怖心の虜になっているのだと思われた。

次に来院した時、まだ泣く前から、本人に「悪いむし歯きんをやっつけて、痛いの治そうね。動くと危ないから、チャイルドシートで動かないようにお手伝いしてもらうからね」と説明しながらレストレイナーに入れてしまい、治療を始めた。

号泣したが、想定内。麻酔が効き辛かったがこれも想定内。だが、やはり、泣き叫ぶ中を2本抜髄するのは、なかなか大変だった。痛みが無くなってようやく静かになって終了。ようやく、バキュームや、水には大丈夫になった。

その後の2回、根治と根充は、タービン類を使わなくていいので、何とか、レストレイナー無しで治療が可能だった。

さて、抜髄根充した歯には乳歯冠をセットするのだが、予約日に父親と共に来院。

タービンを使わなくてはならないので、痛くないこと、3つ数えたらお休みすることを説明して、始めようとしたが、やはり怖がってすぐには寝ない。父親に説得され、寝かしつけられるが、また起き上がるということを何度も繰り返す。

どうしてもだめなら、またレストレイナーに逆戻りかとも思ったが、父親に対しては母親と違って甘えが減るようで、一度咬合面を削ることができた。

みんなで褒めちぎって、さらに何度か削ることができた。だが、2本あるので、時間がかかる。だんだん舌や顔が動くようになってきていた。

咬合面の次に軸面、歯頸部の形成になったところで、「ちょっと歯茎に触ったらごめんね」と削りだしたのだが、少し動いたため、歯肉に触ったらしい。

「おしっこ~!」

と叫ぶ。

「行ってきたんだけどな」と父親。

「それじゃ、あと1回だけしたら行こう」と私。

と、なんだか噴水のようなものが目に入った。

「えっ!なに?!」

見れば、男の子がパンツから〇〇〇〇〇を出しているではないか。

止めどもなくあふれる噴水。父親も抑えようとしたが無理だった。

「おしっこは無菌、無菌!」と、医師である父親が叫ぶ。

まあ、たしかにそうだ。

止まるまで見ているしかないし、もう笑うしかなかった。

幸い、着ていたものがスエット生地のトレーナーとパンツだったので、みんな水分を吸ってくれて周囲への被害は少なくて済んだ。

たぶん、歯肉に触った時に少し痛かったのだろう、それでもまだ続くのかと急に恐怖心がわきあがってきて、おしっこということになったのではないかと思われる。

出し切ってしまうと、本人は少しは落ち着いたようだったが、削ろうとすると嫌がった。

「じゃあ、いいよ、後は先生ががんばるから」と、乳歯冠を作り始めた。

1本はすぐにできたが、もう1本奥の歯は、かみ合わせが深いのと、軸面の形成が不十分なため、なかなか思ったようにはできない。特に、バイトが高くなってしまうのがなんともいけない。
何度も試適をくりかえしていると、「時間かかるの?」と男の子が聞く。

「お前が削らせないから、先生が頑張らなくちゃいけないんだろ?」と父親がこちら側に立ってフォロー。

「そうだね、もうちょっと削らせてもらえたらね・・良かったんだけど」「さっき、ちょっと痛かったのかな?」

男の子は頷く。

「ごめんね。」

少し安堵の顔が浮かんだので、「痛くなかったら削らせくれるかな?」と聞いてみたら、「うん」とのこと。

咬合面を2~3回削らせてくれて、ようやくかみ合わせが決まった。

無事2本乳歯冠が入って、ご褒美のシールをもらって、着替えを持ってきてなくておしっこまみれの洋服のままだったが、晴れ晴れとした顔で帰って行った。

それにしても、手でつかんでパンツの外に出しちゃったのか・・

今までに何度も、ゲロゲロされたり、おもらしされたことがあったが、小便小僧を見たのは、初めての経験であった。

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