うさぎパン
娘が、学校の図書館から本を借りてきた。
基本的に娘は本が好きな方だと思うが、「世界の名作」と言われるような本は食わず嫌いをしているようなところがある。小学校の時は、よく図書館に連れて行ったが、そのコーナーにはついぞ立ち寄ろうとはしなかった。私が試しに借りてきても全く興味を示さず、読み聞かせをしてやろうと思っても、違う本をリクエストされる始末だった。
借りてきた本は『うさぎパン』。
内心、「またか。本当に軽い本しか読まないんだから・・・」と、失望したが、その本を手に取ってみて、ちょっと気が変わった。
装丁がいいのである。紙質、色合い、デザインにこだわりがあり、かわいい。
娘が図書館や本屋で本を選ぶ時の選び方を、前に聞いたことがある。
「まずね、題名を見るでしょ。次に、カバーの色やデザインを見て気に入ったら、中を読んでみて、面白そうだったら借りる(買う)の。」
そうか、題名に『うさぎ』ね。
お弁当の日、食が細かった娘のためにうさぎをかたどったチキンライスにしたり、リンゴもうさぎの耳をつけてあげると完食してきた。
洋服も、うさぎが付いたものがお気に入りだった。
2~4才の時に着ていたセーターや、5~6才の時に着たトレーナーは、手放すのが嫌だと言って、まだ箪笥にしまってある。(それ以外、小さくなったものはほとんど、2歳年下の従妹にあげて、着てもらっていたのだが。)
ソックスもうさぎ。
髪の毛も、毎日、いろいろなチョッピンで、ウサギの耳のように頭の両横にゆわえて登園していた。
『パン』・・・パン屋さんか、パティシエになりたいと言っていた時期があった。
そんな娘だから、『うさぎパン』という題名はストライクゾーンど真ん中だったはずだ。
それに、手に取ってみると、紙の質感が暖かいし、私も魅かれた装丁である。中を読む前にもう、借りようと思っていたに違いない。
主人公は、高1の優子。3歳の時に「母」の聡子を亡くした。父親は単身赴任中で、「継母」だけれどいい関係のミドリさんと一緒に暮らしている。1学期の成績が悪かったため、家庭教師として、美和ちゃんがやってくる。25歳、難関大学物理学科の大学院2年生。美和ちゃんには、ミドリさんにいえないことも言える。
同じパン好きの冨田くんと意気投合して、パン屋めぐりをしたりする中でほのかな恋心も抱く。友達との楽しい学校生活。
それらが、爽やかに、魅力的に書かれていて、あっという間に読めてしまった。
この本の中で、印象に残ったこと。
それは、優子が美和ちゃんに、「元素記号って意味あんの?」とか「役に立たない古文の助動詞活用を覚える必要ってあるの?」などと聞いた時の答えなのだが、
「頭は使わないとなまっちゃうのよ」
「忍耐力を養うためだよ」
「世の中に必要なものしかなかったら、とんでもなく殺風景なことになるわよ」
「まだ若いんだから、意義のあることだけに集中するには早すぎるよ」
・・・なかなか、良いことを言っていると思った。
作者の瀧羽麻子さんは、1981年兵庫生まれ。京大卒。この作品で、2007年第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞した。美和ちゃんと等身大の彼女は、作中の美和ちゃんとダブってみえる。
難を言えば、途中からファンタジーっぽくなってしまったり、「聡子」と「ミドリさん」と父親の関係については、突っ込みどころが満載なのだけれど、全体的には、読んで良かったかなと思える。特に娘と共通の会話ができたことが収穫かな。
蛇足だけれど、この本の目次が、普通と違う。
これも、装丁を手がけた、名久井直子さんのアイデアなのか。
彼女はとても凝った装丁をする人のようである。
何よりも手間をかけることを厭わない、本作りを楽しんでしていると言うような人のようで、こちらも好感が持てたのであった。
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